福島の建築を舞台にした物語『FUKU CHIKU』を製作しました
概要
令和8年度の「ふくしまDC」や「県政150周年」に向け本県の魅力を発信するため、福島の建築と日常に潜む街の魅力をドラマ×ドキュメンタリーの手法で描いた映像作品を製作しました。
テレビドラマ「名建築で昼食を」、「ちょこっと京都に住んでみた」、「À Table! 」などの制作チームが手がけた、福島県の豊かな風土のもとで人と建築の穏やかな関係性が織りなす「物語」。

タイトル 『FUKU CHIKU』(福築)
主演:佐藤玲
企画:清水啓太郎 監督:吉見拓真 脚本:三浦千秋
制作:株式会社松竹撮影所
公開先 YouTube 福島県公式チャンネル(@PrefFukushima)
https://youtu.be/zRJGAKYki_A
公開日 令和8年3月1日(日)
予告編
FUKU CHIKU予告編(short ver.) https://youtu.be/NokWsXXTV-Q
FUKU CHIKU予告編(long ver.) https://youtu.be/zyCDxSHcLoA
FUKU CHIKU公式Instagramを開設しています。
公式Instagramで情報を発信しています!ぜひご覧ください。
@fuku.chiku https://www.instagram.com/fuku.chiku/
上映会[本編初公開]&トークショーを開催しました(※終了)
日時:2月28日(土)15:00~16:30
場所:須賀川市民交流センターtette 1階でんぜんホール

本編の上映終了後、会場に余韻が残るなか、監督の吉見拓真さん、プロデューサーの清水啓太郎さんによるトークショーを開催しました。
作品に込められた想いや制作の裏話、撮影中のハプニングなど、ここでしか聞けない貴重なお話を伺うことができました。(以下、敬称略)
― 観光PRではなく、“街の物語”を描く
司会:本作は、福島の建築の魅力を伝えつつ、いわゆる観光PRではない作品にしてほしい、というお願いをしました。普段、行政とお仕事をされる機会は多くないと思いますが、どんな挑戦がありましたか。
清水:最初にお話をいただいたのは昨年4月頃でした。私たちは普段、ドラマや映画を手がけていますが、『名建築で昼食を』や『ちょこっと京都に住んでみた』など、ドキュメンタリーとドラマを融合させた作品も制作してきました。
そういう作品を作っていると、“見たあとに実際に行ってみたくなった”という声をよくいただくんです。
僕自身、知らない街に行くと、いわゆる観光名所にはあまり行かないんですよ。むしろ街を歩いて、個人のお店に入って、そこで地元の人に「この辺で面白いところありますか」と聞いて、少しずつその街を知っていく。そんな旅の仕方が好きなんです。
建築も同じで、ただ建物を見るだけではなくて、“誰がどんな思いで作ったのか”どうやって今まで守られてきたのか”という物語を知ると、一気にその建物が魅力的に見えてくる。
今回も「その土地の物語」をどう描くかを大切にしました。観光地を紹介するのではなく、地元の人の記憶や想いに触れることで、「行ってみたい」と思ってもらえる作品にしたかった。
実際に県の方や監督と一緒に、福島の街をずいぶん歩きましたね。ぶらぶらと歩きながら、偶然出会う風景や人の話の中に、魅力を見つけていった感覚です。
吉見:僕自身、これまで東北に行くことはあっても、福島は近すぎて“通過する場所”でした。でも今回、あえて時間をとって街を歩いてみた。すると、瓦屋根の色やトタンの風合いなど、地域の個性が見えてくるんです。
自分の知らないものに出会うこと、そこにある楽しみを見出すこと、身体で感じること。それがすごく楽しい。今回の作品でも、その感覚を大事にしたいと思って撮りました。
― “もやもや”と建築の関係
司会:心に“もやもや”を抱えた主人公の心情が、建築を巡る中で変化していく構成が印象的でした。この着想はどこから生まれたのでしょうか。
清水:自身の経験も含まれてますね。旅行中、もやもやしていたり、いろいろなところを巡りながら昇華されていった記憶を主人公に投影した部分はあります。
建築って、不思議と人の気持ちに作用するんですよね。そこに込められた時間や想いに触れると、「もやもやが消える」というより、「あってもいい」と思えるようになる。
そうした実体験から、今回の作品ではそういう“自分に対する寛容さ”を描きたいと思いました。
吉見:僕は、『名建築で昼食を』を撮っているときに思ったんです。建築って「心の入れ物」なんじゃないかって。
人は建物の中で、自分の感情に輪郭を与えることができる。
最初は「建築はしゃべらないのに、どうやって撮るんだろう」と不安もありました。でも実際に向き合ってみると、建築はとても雄弁だった。
こちらが問いかるように見ていくと、ちゃんと“応えてくれる”んです。僕はその”建築との会話”を撮ればいいんだと思うようになりました。
― 福島で感じた「余白」と「安心感」
清水:福島に来て感じたのは、”余白”の多さですね。家と家の間にゆとりがあったり、何もない空間があったりしますよね。
それが、街全体を俯瞰して理解できる感覚につながる。川が流れていて、遠くに山が見える。「今、自分はここにいる」という安心感があるんです。その安心感は都会にはない魅力だと思います。
吉見:「ここがいい」と一言で言うのは難しいんですが、“ふるさと”という言葉が似合う場所だと思いました。
風土や空気感そのものが魅力で、それを感じられること自体が豊かだなと。
― 撮影現場の“想定外”
司会:撮影中の印象的なエピソードはありますか。
清水:ラストシーンのフリスビーですね。
実は、あえて“うまく飛ばないフリスビー”を使おうと思っていたんです。人生ってうまくいかないこともあるよね、という意味を込めて。ところがロケ当日、そのフリスビーがなくなっていて…。
大慌てで、ガムテープで細工して”飛ばないフリスビー”を自作しました(笑)。
あと、スタッフの宿泊予約を取り忘れていて、ホテルを探し回る事態にもなりました。あれも焦りましたね。
― 「福島をどう歩いてほしいか」
司会:この作品を観た方に、福島をどう体験してほしいですか。
吉見:「観光しよう」と思わなくていいと思うんです。
ただ来て、川を眺めたり、山を見たりする。それだけで十分意味がある。
福島は、自分の居場所を見つけられるような土地だと思います。
清水:この作品を見て”ちょっと歩いてみたいな”と思ってもらえたらうれしいですね。
実際に歩いて、空の広さや街のスケール感を感じてほしいですね。
観光地ではない場所にこそ、物語や価値がある。その“体感”をしてもらえたら嬉しいです。
― 一発勝負で捉える“その瞬間”
観客からの質問では、撮影手法についても話が及んだ。
清水:われわれの作品は基本的に“一発撮り”です。
事前に細かく準備するのではなく、その場で見たもの、感じたことをそのまま言葉にしてもらう。セリフを間違えてもいいし途中で止まってもいい。むしろ、その瞬間のリアルを大切にしています。
吉見:僕は”再現可能なこと”をあまりやりたくないんです。同じ場所でも、時間や光、気持ちによって見え方は毎回違う。
だから“正解”を用意するのではなく、その瞬間にしか生まれないものを撮りたいと思っています。
― 建築が語りかけるもの
トークの終盤、印象的なシーンについて問われると、吉見監督はこう振り返った。
吉見:教育会館の廊下から会議室へ入るシーンですね。
扉を開けた瞬間、光が差し込んで空間が一気に広がる。あれは計算以上の美しさでした。
役者さんも初めて見る景色で、”わあ”って声が出た。その驚きも含めて“本物の瞬間”が撮れたと思います。
― 終わりに
トークショーは、終始リラックスした雰囲気の中で進みながらも、建築と人の関係、そして「場所を体感すること」の価値が、じんわりと浮かび上がる時間となった。
作品『FUKU CHIKU』が描くのは、名所ではなく、日常に潜む風景とそこに宿る物語。
登壇者たちの言葉どおり、その魅力は「歩くこと」で初めて立ち上がるのかもしれない。
当日はたくさんのご来場ありがとうございました。
