2017年6月定例会 討論 宮本しづえ議員
議員 | 宮本しづえ |
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所属会派 (質問日現在) | 日本共産党 |
定例会 | 平成29年6月 |
質問等 | 討論 |
質問日 | 7月5日(水曜日) |
25番(宮本しづえ君)日本共産党の宮本しづえです。日本共産党県議団を代表して意見を述べます。
まず、知事提出議案について、議案第11号、第12号、第16号、第17号、第18号及び第30号について反対の立場で意見を述べます。
議案第11号「個人情報保護条例の一部を改正する条例」、議案第12号「情報公開条例の一部を改正する条例」について、両議案は関連して国において一括して法改正が行われたことにより条例改正を行うものです。
国の個人情報保護法の改正では、行政機関が有する個人情報を活用して新たな産業の創出を目指すとし、行政機関等は保有する個人情報の利用に関して民間事業者から提案を募り、一定の審査をした上でその事業者と利用契約を締結します。その際、個人を特定できないよう加工した匿名加工情報を作成し、その管理は個人情報保護委員会が担うとされています。
匿名加工情報の作成について、一部民間事業者への委託可能としており、不適切な個人情報の流出や漏えいも懸念されており、識者からも問題視する声が上げられているところです。今回の県条例の改正は、この法改正を前提としたものであり、賛成できません。
また、情報公開条例については、個人情報の中身を具体化したものですが、個人情報保護法と関連して改正が行われたものです。
情報公開法の本来の趣旨は、行政機関等が保有する情報は原則公開とすべきなのに対して、個人情報保護を理由にほとんど黒塗りの文書が開示されてきた経緯があり、個人情報を特定することで県民にとっては非開示情報が拡大するのではとの懸念を生じさせることにもなりかねません。よって、後に提案される県議会の情報公開条例の一部改正とあわせて賛成できないことを表明するものです。
次に、議案第16号「福島市の中核市指定に係る申出の同意について」の議案です。
地方自治法改正により、中核市の要件が変更され、かつて30万人以上だった人口要件が20万人以上で中核市となることができるようになりました。
最も大きな事業の移管は保健所機能です。福島市は新たな保健所機能を整備するため、8億円の事業費で市保健福祉センターの改修を行っており、国庫負担のない新たな人件費負担も年間1億円に上ると報告されています。県北保健福祉事務所は福島市内にあるため、市民にとっては利便性に大きな支障はなく、むしろ専門職員等の配置など新たな市民負担が生じます。
精神保健福祉に関して、措置入院等の事務は県北では引き続き県が担当することとなるため、一旦市に持ち込まれた事案は県に回されることになり、緊急対応が求められた際には対応がおくれることも懸念されます。市民にとっては、保健所の二重行政ではないかと指摘する声もあります。
中核市は道州制を見据えた広域行政推進の一環と考えられ、福島市は隣県自治体を含む広域連携を推進しようとしていますが、福島市議会の特別委員会報告においても、市の特色を生かしたまちづくりについては十分なメリットは見出すに至る説明はなされなかったと結論づけており、さらに市民的な議論を尽くすべきと考えます。
議案第17号及び第18号「県の行う建設事業等に対する市町村の負担について」です。
この件は、これまでも述べてきたように、地方財政法及びその他の法律に基づき、負担させることができるという規定によるものですが、大震災と原発事故の復興に懸命に取り組む市町村を県は財政面でも支援すべきであり、市町村負担を求めることには反対です。
議案第30号「専決処分の報告及びその承認について」の件中、地方税法改正の中の一部について反対の意見を述べます。
今回の地方税法改正の中に、緊急事態法や安保法制に伴う改正で、我が国が実施する諸外国の軍隊への支援目的で、自衛隊の輸送車両への燃料補給に関して、軽油引取税を免除する規定が新たに盛り込まれており、これには賛成できません。
次に、議員提案の意見書案及び関連する請願について意見を述べます。
議案第133号及び第135号森友学園、加計学園問題の真相究明を求める意見書案についてです。
国民の税金を使い、公平公正であるべき国政をゆがめて私物化し、安倍首相や首相夫人の友人に便宜を図ったのではないかとの疑惑を持たれているのが森友、加計学園問題です。
国民世論は「政府の説明は不十分で納得できない」が八割近くを占めています。直近のマスコミ調査による内閣支持率は急落し、全てで不支持が支持を上回る結果となりました。疑惑にふたをする安倍政権への有権者の批判は、東京都議選で自民党が現有議席を半分以下に減らす結果にも明確に示されました。
森友、加計学園の学校建設に安倍首相を初め官邸、内閣府がどのようにかかわったのか、真相の解明は県民はもとより国民共通の強い願いです。よって、本意見書は可決すべき、同趣旨の請願は採択すべきです。
次に、議案第134号「憲法第9条を改正しないことを強く求める意見書」についてです。
ことしは現憲法が施行されてちょうど70年目の節目の年です。日本国憲法は、戦前の絶対主義的天皇制と侵略戦争の深い反省のもとに、国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重を3原則とする世界に誇れる憲法として戦後日本の歩みの土台となってきました。わけても憲法9条は、戦争放棄とともに、2項では一切の武力の保持を禁じ、国の交戦権も認めないとうたっています。
ところが、ことしの憲法記念日に安倍首相は、憲法9条に新たに第3項を設けて自衛隊の存在を明記するための改定を行い、2020年までに施行する意向を表明したのです。憲法に自衛隊が明記された途端に憲法9条2項は空文化し、これまでの憲法上の制約は取り払われ、自衛隊が世界のどこででも武力行使が可能となり、日本は戦争する国に変わってしまいます。平和憲法の土台を掘り崩し、変質させることになる憲法9条の改定は絶対に認められません。よって、この意見書は可決、同趣旨の請願は採択すべきです。
次に、議案第138号「各行政機関の支援を得た民間事業者による既存ダムを活用した水力発電事業の実施を求める意見書」についてです。
再生可能エネルギーの推進の上で、水力発電の促進は当然必要です。しかし、本意見書の中で発電効果を高めるためにダムの水位の引き上げを可能とするよう求めている点には同意できません。
2011年7月の只見川水害の原因が、東北電力とJパワーが共同で行っている水力発電において、発電用ダムであることを理由に治水よりも発電を優先したため、集中豪雨の際も満杯近くまでダム水位を上げた状態で管理され、夜間突然通報なしに放水が行われたことにより、下流域住民に甚大な被害が発生したとして、ダムの管理責任をめぐる裁判が行われています。ダムの役割は第一義的に治水により流域住民の安全を守ることであり、水位を上げることは水力発電を優先することになりかねず、治水に逆行することになります。よって、本意見書案及び同趣旨の請願には賛成できません。
次に、議案第141号「国民健康保険都道府県単位化に係る意見書」についてです。
来年度から国保の運営主体が都道府県に一元化されますが、低所得加入者が多く、財政基盤が脆弱な国保制度が抱える根本的な問題点が解消されるわけではありません。本意見書案は、削減され続けてきた国庫負担を増額することで財政基盤を安定化させるとともに、加入者負担の軽減を求めるものであり、この間全国知事会も繰り返し求めてきたことです。よって、本意見書は当然可決すべき、関連する請願は採択すべきです。
次に、議案第143号「道徳教育等で教育勅語を教材としないことを求める意見書」についてです。
教育勅語の基本は、一旦緩急あれば天皇のために命をささげよと国民に求めることにありました。そのため、戦後国民主権、恒久平和を掲げる現憲法とは相入れないものとして、国会において排除決議がなされた経緯があり、現憲法のもとで教材として活用することは認められません。よって、この意見書案は可決、同趣旨の請願は採択すべきです。
次に、議案第145号、第146号農家の戸別所得補償制度の法制化、復活を求める意見書案についてです。
2010年、民主党政権のもとで日本の農政では初めて農家の戸別所得補償制度が創設され、水田10アール当たり1万5千円の交付金が支給されることになりました。ところが政権交代により、岩盤壊しを掲げる安倍政権のもとで交付金は半額に減額された上に、来年にはついに廃止となり、米の生産に国は責任を負わないことになりました。主食の米を一般の競争にさらしていいのかが問われています。
歴代自民党政権は、米余りを理由に47年間減反政策を進めてきた一方で、ミニマムアクセス米の輸入を受け入れてきた結果、日本の生産者米価は下落し続け、今では御飯1杯わずか22円という安さです。生産者は、せめて30円になれば生産費が賄える、35円なら後継者が育つとしており、安心して水田農業に取り組める条件の確立、とりわけ戸別所得補償の復活、法制化を求めているのです。日本の主食が安全で安定的に供給できる環境を整備することは農政の基本です。よって、本意見書は可決、関連する請願は採択すべきです。
次に、継続中の議案第113号「核兵器禁止条約の交渉会議に参加し、条約実現に真剣に努力するよう求める意見書」についてです。
広島と長崎に原爆が投下され72年、ようやく人類は核兵器のない世界に向けて画期的な一歩を踏み出しました。核兵器禁止条約の締結に向けた交渉を行う国連の第1期会議が本年3月に開かれ、現在第2期会議が行われており、最終日のあさって7月7日には圧倒的多数の賛成で核兵器禁止条約が採択されようとしています。この条約が採択されれば、歴史上初めて核兵器が違法なものとして扱われることになります。
この背景には、被爆70年たっても今なお原爆症に苦しむ多くの被爆者が存在するように、核兵器の持つ非人道性が世界の共通の認識として発展してきたこと、日本を初め世界の反核平和を求める市民や被爆者の運動があったこと、その一方で核保有国で核兵器使用を辞さないとする危険な動きが強まっていることがあります。
この国連会議に被爆国として参加して役割を果たすと表明していた日本政府は、アメリカからの要請を受けて一転して不参加となり、被爆国の政府としてあるまじき態度をとり続けています。
世界が核兵器廃絶に大きく動き出している現在、唯一の被爆国である日本政府は、間もなく締結される核兵器禁止条約を支持、批准すること、核兵器の非人道性を世界にアピールする被爆国ならではの国際的役割を果たすことが求められています。
福島原発事故による放射能汚染に苦しむ福島県民は、放射能汚染の被害がいかに長期にわたり被災者を苦しめるものであるか身をもって体験しており、原爆被爆者の思いと通じるものです。核兵器と人類は共存できないことは明瞭です。よって、本意見書案は可決、同趣旨の請願は採択すべきです。
次に、新規請願110号「保育所の充実と保育士の処遇改善を求めることについて」です。
県内においても認可保育所の待機児童は増加しており、日本一子育てしやすい県を目指す本県にとって保育所の充実は喫緊の課題となっています。保育所増設のためには、保育士の確保は不可欠ですが、低賃金、非正規の不安定雇用が半数を占めるなど、劣悪な処遇が保育士確保を困難にしています。
国は今年度予算で保育士処遇改善策として1人月額6千円の給与改善を盛り込みましたが、全労働者賃金比較で月額11万円も低い保育士の賃金改善にはほど遠いのが実情です。よって、本請願を採択し、国に抜本的な処遇改善策を求めるべきです。
次に、継続請願17号「被害の実態に見合った営業損害賠償を東京電力に求めることについて」です。この請願は2015年12月議会に提出され、継続審議となっていたものです。
福島第一原発事故から6年3カ月が経過しましたが、福島の商工業も農林業も深刻な影響を受け続けており、事故前の状況にはとても戻っていません。東電は賠償の3つの誓いを表明し、被災者に寄り添い、被害が継続する限り賠償を継続すると約束してきましたが、誠実に賠償に応じる姿勢はなく、将来分の一括賠償の値切りや打ち切りが横行していることは周知のとおりです。
県内経済再生、県民の暮らしとなりわい再建はいまだ道半ばであり、賠償継続は不可欠の条件です。原子力損害賠償紛争審査会指針は、賠償の終期を定めておらず、被害が継続する限り賠償は継続すべきとし、事故前の状況を取り戻すまで賠償することを求めています。この指針に沿い、県の原子力損害対策協議会も県当局も被害は継続しているとの認識に基づき、賠償の継続を求めています。
県議会が賠償継続の意見書を否決するなら、オール福島を代表する県損害対策協議会の要求にも背を向け、福島の事故も被害も終わったことにして原発再稼働を進めようとする東電と国を利することになり、県民の代表機関である県議会の任務放棄と言われても仕方がないのではないでしょうか。
県民は、原発事故は人災として、加害者である東電と国が責任を認め、適切な賠償と被災者支援を行うことを強く求めています。よって、本請願は採択すべきです。
以上で私の討論を終わります。