自動車リサイクル業の株式会社ナプロアース(福島県伊達市)は、かつては「男社会」の印象が強かった業界で、社員の男女比をほぼ同じまでに高め、若い社員が多く活躍しています。

■「生理休暇」から「ケア休暇」へ。名称変更が変えた社員の意識
―2024年9月に導入した「ケア休暇」について教えてください。
もともと就業規則には「生理休暇」が存在していました。しかし、現場には男性上司が多く、女性社員がその名称を口にして申請するには強い抵抗感があり、利用率は長年「ゼロ」の状態が続きました。
導入したケア休暇は、単なる言い換えではありません。対象を女性特有の月経前症候群や不妊治療だけでなく、男性の更年期障害なども含めた包括的な健康管理制度へと進化させました。月に1回、有給扱いで取得できるこの制度は、「ケア」という言葉にすることで、具体的な不調の内容を明かさずに申請できるようになりました。
上司側も聞きやすくなり、実際に利用する社員が現れ始めています。現在は若手が中心ですが、将来的に社員が年齢を重ね、更年期障害などに直面した際のセーフティネットになると期待しています。
■「健康は企業の力」。再検査費用は全額負担
―経営の柱に据えている「社員の健康」という考え方について教えてください。
「社員が健康であることが企業の力になる」。そのため、健康診断を「受けて終わり」にはさせません。異常が見つかった際の再検査費用は会社が全額負担します。実際に、精密検査が必要とされた社員が食生活を改善し、健康を取り戻した姿を見るのは、何よりの喜びです。健康診断の結果がすべて良い社員は、年末に表彰しています。
身体だけでなく、2カ月に一度の社外カウンセラーによるメンタルケアも実施し、心身両面の健康を支えています。
■「休んでもいいんだよ」。女性が辞めずに済む環境づくり
―女性が働きやすい職場づくりにおいて、特に意識していることは何でしょうか。
特に子育て中の女性は、「たびたび子供の病気で休むのは申し訳ない」という強い罪悪感を抱きがちです。私は彼女たちに「それは女性なら必ず通る道。休んでもいいんだよ」と伝え続けています。特定の仕組みに頼るのではなく、日々の「声かけ」によって、部署全体でフォローし合う雰囲気づくりをしています。
家庭の状況でフルタイム勤務が難しくなれば、パートや契約社員への雇用形態変更を柔軟に提案します。育児や介護と両立できるよう職場環境を整え、離職ではなく自分自身の能力を発揮し、充実した職業生活を送ってほしいと願っています。
■社員が主体となって決める、枠にとらわれない福利厚生
―「福利健康委員会」という組織があると聞きました。
これも最近始めたことで、社員が主体となって活動を決める組織です。「心・体・食」を軸に、自分たちが本当に必要とする施策を提案、運用しています。ジムや美容院、理髪店の利用料、整体の施術料、さらには釣りのボート代などのレジャー費用まで、費用の半額(毎月上限5,000円)を会社が補助します。月に一度の野菜ジュース配布や、ウォーキングの歩数や段ボール回収といった活動に応じて「社内ポイント」が付与され、商品券やギフト券などと交換できる楽しみも提供し、健康意識を高める仕掛けが満載です。
■原点は2011年の絶望。前代表の池本氏が誓った「社員第一」
―ここまで社員の福利厚生に力を入れるようになったきっかけを教えてください。
2011年の東日本大震災です。当時、浪江町にあった会社は原発事故の影響で30人ほどいた社員が1日にしてバラバラになりました。約1カ月間、社員と連絡が取れない極限状態を経験しました。南相馬市の店舗が津波に襲われ、店長と連絡が途絶えた際、当時代表だった池本篤は「(店長は)亡くなった」と絶望の淵にいました。後に店長の生存が確認されたとき、池本は「人の命が一瞬で失われるかもしれない」という恐怖と、戻ってきてくれた社員へ深い感謝の念を抱きました。そこで「利益優先ではなく、今、自分ができる精一杯のことを社員にしていこう」と誓いました。
■震災からの再スタート。女性社員が主力の会社へ
―震災後、どのように会社は変化してきたのでしょうか。
2011年11月に現在の伊達市梁川町に移転して再スタートを切ると、社員を大切にする考え方が根付いてきました。カレー、ラーメンなど手作り料理を作って社員みんなで食べて結束を深める「サラメシ」は、創業当時から続いています。今もスパイスカレーなどを時々作ったり、地域の飲食店に協力してもらい、社員や一般の方が一緒に食べる形に変えながら、今も続いている交流事業です。さらに震災後からは、アニバーサリー(誕生日)休暇を導入しました。大切な記念日を家族や友人と過ごし、リフレッシュしてもらう制度で、プライベートな時間を充実させることが仕事のモチベーションにつながっていると思います。
これまでお伝えしてきたさまざまな取り組みをすることで、働きやすい職場づくりをしていることが社外に知られるようになり、震災後は女性社員が増え、今では会社の主力として活躍しています。現在は男性社員25人、女性社員22人とほぼ同数で、平均年齢も38歳と若返りました。
■未来へ。「やっぱりここで働きたい」と戻ってこられる場所へ
―今後の目標をお聞かせください。
この思いと制度を、次世代の社員にしっかりと継承していくことです。会社の中にいると当たり前の制度になっていますが、例えば、一度会社を離れて外の世界を経験した社員が、「やっぱりナプロアースで働きたい」と戻ってきてくれるような、そんな魅力ある環境を守り続けていきたいです。
■自分を磨き、楽しく働く
販売部貿易生産課 中島万悠香さん(27歳)「入社8年目で自動車部品の検査などを担当しています。就職活動中、皆さんが楽しそうに仕事をしている姿を見て入社を決めました。特に気に入っているのは『美容サポート制度』です。美容室やネイルサロンの代金を月1回、会社が一部補助してくれる仕組みで、自分を整えるための大きな支えになっています。女性に優しい制度があるおかげで、前向きに業務に励めています」
■子育てを支える温かい絆
販売部貿易生産課主任 渡邊鈴夏さん(28歳) 「入社して9年、自動車部品のネット販売などを担当しています。今は8歳の子どもを育てています。子どもが急に体調を崩して保育園から呼び出しがあっても、周囲が『帰っていいよ』と温かい言葉をかけてくれる環境があります。社内にはお父さん社員も多く、性別を問わず育児への理解が深い雰囲気があり、制度以上にその『空気感』に日々助けられています」

株式会社ナプロアース
業務内容: 自動車買い取り・部品リサイクル業
社員数47人(男性25人、女性22人)平均年齢38歳
〒960-0719 福島県伊達市梁川町やながわ工業団地63‐1 Tel.024-573-8091 Fax.024-573-80
会社ホームページ https://www.naproearth.co.jp/