ラウンド農ふくしまWeb-センター通信(R7試験研究・業務)-
令和7年度 試験研究・業務の紹介
GAP認証を取得することで経営改善効果が期待できます
GAP(Good Agriculture Practice)は「持続可能な農業」のために生産者が取り組むべきルールを
定め、実践する活動です。
GAP認証取得による経営改善効果を調べた結果、法人経営体や個別出荷を行っている経営体で経営
改善効果がより高いこと、また「販路の拡大」「販売単価の安定・向上」において、認証取得後の年数
が長くなるほど改善効果が高まる傾向が見られました。
表 経営形態別・出荷方法別の改善効果
食味良好な「ナシ福島7号」の育成
果樹研究所では、県内の主要果樹である「モモ」「ナシ」「リンゴ」の新品種の開発を行っています。
ナシでは「幸水」よりも早く収穫でき、食味良好な「ナシ福島7号」を育成しましたのでご紹介します。
「ナシ福島7号」の開花期は「幸水」と同時期で、8月中~下旬に収穫できる系統です。交配親は、
「八里(やさと)」×「あきあかり」です。
果肉に含まれる香気成分によりミルクのような甘い香りを持つのが特徴で、甘みが強く非常に多汁な
食味です。また、ナシの重要病害である黒星病の発病が少ない傾向が見られました。試食検討会を行っ
た結果、食味で高い評価を獲得しました。
今後は、品種登録出願後(令和7年中)のさらなる高品質果実生産に向けて研究を進めています。
図1 ナシ福島7号
果樹害虫 ナシヒメシンクイの発生消長と残効の長い殺虫剤
近年の高温条件により、モモ、リンゴ、ナシ等を加害するナシヒメシンクイの発生時期の長期化と
発生回数が増加し、被害拡大が大きな問題となっています。
2023、2024年の発生盛期の予測日は、平年と比較して、越冬世代で12~18日早く、その後の世代
も平年値と比較して早まりました。
各種殺虫剤のナシヒメシンクイに対する防除効果は、
シペルメトリン水和剤(商品名:イカズチWDG)
トラロメトリン水和剤(商品名:スカウトフロアブル)
アセタミプリド水溶剤(商品名:モスピラン顆粒水溶剤)
スピネトラム水和剤 (商品名:ディアナWDG)
クロラントラニリプロール水和剤(商品名:サムコルフロアブル10)
で高く、残効が長いことが明らかとなりました。
図1 ナシヒメシンクイ被害果 図2 ナシヒメシンクイの発生消長
図3 ナシヒメシンクイ防除効果
ブドウの「皮ごと食べやすさ」とは?
こんにちは、生産環境部流通加工科です。
近年、皮ごと食べられる(皮をはずすことなく食べられる)ブドウ品種に対して消費者ニーズが
高まっています。そこで、ブドウの新品種育成の過程で、「皮ごとたべやすさ」を評価する客観的
な数値指標が求められていました。
当科では、福島県で栽培されている主要品種と、有望な交雑親となる品種について、官能評価
(味の評価)に加え、物性と可溶性タンニン含有量を調査し、「皮ごと食べやすさ」を判定する
評価法の確立に取り組みました。
「皮ごと食べやすさ」は、皮のかみ切りやすさや、渋みなど複数の要因が絡み合っていますが、
ブドウの果粒の物性値と、渋みの要因となる可溶性タンニン含有量を活用して評価できることを
明らかにしました。
これにより、ブドウの新品種育成の初期段階で、「皮ごと食べやすさ」を定量的に評価するこ
とができ、大規模な官能評価を実施する必要なく、有望な系統を選抜することができることにな
りました。また、栽培においては、既に品種となっているのブドウについて、物性値を収穫判断
の目安に活用できるようになりました。
今年度も引き続き、食品流通加工に関する技術開発に取り組んでいきます。
図1 官能評価の様子 図2 物性測定の様子
ミスト+日射制御型遮光で施設キュウリの収量を確保しつつ作業環境を改善
できます 
県内の夏秋キュウリは、長らく露地栽培がメインでしたが、近年では施設栽培が増加しています。
施設栽培は、作期の拡大や病害虫対策などメリットが大きい反面、高温の影響を受けやすく、
猛暑下ではキュウリの心焼けや葉焼けが問題となるほか、作業者の労働環境の低下が問題となって
います。
そこで、キュウリの施設内にミスト装置(霧状の水を噴霧するもの)と、日射制御型遮光(日射
量に応じて遮光幕を開閉するもの)を設置して、作業環境(気温、WBGT(暑さ指数))を調査
しました。
その結果、ミストと日射制御型遮光を併用すると、キュウリの収量を確保しつつ、作業環境を改
善できることがわかりました。
図1 日射制御により遮光幕が展張された様子