■日時 令和4年2月3日(木曜日)13時00分~13時45分
■会場 応接室
【発表事項】
1 令和4年度当初予算について
【質問事項】
1 令和4年度当初予算について
2 元首相らのEU欧州委員会への書簡について
3 甲状腺がん患者による集団訴訟について
4 新型コロナウイルス感染症について
5 令和4年度組織改正について
【発表事項】
令和4年度当初予算について発表いたします。
一般会計当初予算の総額は、1兆2,677億円となります。対前年度比で92億円の増、このうち、復興・創生分は2,429億円となります。
歳入については、県税や地方交付税はもとより、「原子力災害等復興基金」などの各種基金を有効に活用し、必要な財源の確保に努めました。
歳出については、根拠に基づく政策立案の考え方を重視しながら、徹底した事務事業の見直しに努め、予算編成を行いました。
令和4年度は、本県が目指す将来の姿の実現に向けて、新しい総合計画がスタートを切る重要な一年となります。
このため、当初予算につきましては、新型コロナウイルス感染症への確実な対応、震災・原子力災害からの復興と福島ならではの地方創生の力強い前進、防災力の強化や地球温暖化対策、デジタル変革の推進など、こういった重要な課題に対応していくための予算として編成いたしました。
それでは、新年度予算の主な事業について御説明いたします。
はじめに、新型コロナウイルス感染症への対応につきましては、診療・検査体制や病床、宿泊療養施設の確保はもとより、自宅療養者への支援体制の強化、速やかなワクチン接種の推進など、医療機関や市町村等との連携により、引き続き、医療提供体制の整備と感染拡大防止に全力を尽くしてまいります。
また、中小企業等への伴走型の資金繰り支援を始め、県内におけるサプライチェーンの強化、福島空港を活用した広域的な交流の再生、県産酒の流通販売の拡大など、社会・経済活動の維持・再生、活性化にしっかりと取り組んでまいります。
次に、避難地域における復興の加速化についてであります。避難指示の解除が進む中、引き続き、事業再開への支援や営農再開、産地の高付加価値化に向けた取組を着実に推進するとともに、医療提供体制の再構築など、暮らしと生業の再建に最優先で取り組んでまいります。
また、国、市町村と連携し、一体となって移住・定住の一層の促進に取り組むなど、避難地域の復興を加速してまいります。
次に、健康長寿の実現、結婚・出産・子育て支援についてであります。健民アプリの充実により、健康づくりを推進するほか、がん検診の受診率向上を図るなど、健康長寿の実現に向けた施策を効果的に展開してまいります。また、新たな県中児童相談所の開所や医療的ケア児への支援体制の強化、母子保健と児童福祉の一体的な相談体制を整備する市町村への支援など、安心して結婚・出産・子育てができる環境づくりを着実に進めてまいります。
次に、教育環境の充実についてであります。ICTを活用した「学びの変革」の実現に向け、高等学校における1人1台端末の導入や子どもたちの情報モラルの向上に取り組んでまいります。
また、県立高等学校改革により再編する学校の校舎等の着実な整備や教育内容の魅力化を進めるとともに、新たに県立高校9校の普通科においてコース制を導入いたします。
さらに、関係機関と連携し、ヤングケアラーへの支援強化に取り組むほか、学びのセーフティネットを担う夜間中学を設置する自治体を支援してまいります。
次に、医療・介護体制の充実についてであります。これからの地域医療を担う総合診療医や
感染症に関する専門知識を有する看護師の養成、医療機関や介護施設などを結ぶ情報ネットワークの拡充、「ふくしま医療センターこころの杜」の開院など、県民の皆さんの健康を支える医療・介護の提供体制の充実に取り組んでまいります。
次に、安心して住み、暮らすための環境づくりについてであります。
除染により生じた除去土壌等の搬出を終えた仮置場について、国や市町村と連携し、原状回復を着実に進めてまいります。
また、近年発生した災害からの早期復旧や河川改修などのインフラ整備に加え、防災情報の効果的な集約・発信、「マイ避難」の定着に向けた体験型防災イベントの開催、自主防災組織の強化など、災害に強い県づくりを進めてまいります。
さらに、犯罪被害に遭われた方に対し、関係機関と連携した支援の充実を図るなど、県民生活の安全・安心の確保に力を尽くしてまいります。
次に、豊かで持続可能なまちづくりについてであります。
地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、「福島県2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、引き続き、再生可能エネルギーの導入を促進するとともに、企業との連携による水素社会のモデル構築、環境に優しい自動車や住宅の普及拡大に取り組むほか、環境保全型農業の推進、小名浜港におけるカーボンニュートラルポート形成に向けた計画の策定など、全庁一丸となって、様々な取組を進めてまいります。
次に、中小企業等の振興、新産業の創出・集積についてであります。
県内中小企業等に対して、知的財産を活用した経営戦略の強化や脱炭素化に向けた取組、ものづくり産業のデジタル変革などについて、関係機関と連携しながら、丁寧に支援してまいります。
また、福島イノベーション・コースト構想の推進に向け、廃炉関連産業に参入するための技術支援体制を強化するほか、医療関連産業や航空宇宙関連産業の人材育成・確保に一層力を注ぎ、新産業の創出・集積を促進してまいります。
次に、農林水産業の振興についてであります。
新規就農者に対する資金・技術両面からのサポート体制を充実させるほか、林業アカデミーふくしまにおける長期研修の開講、漁業就業者に対する現場研修や漁船等の導入支援などに取り組み、農林水産業の担い手確保を進めてまいります。
また、園芸生産拠点の育成や県産花きの県内における利用拡大、県オリジナルいちご品種のデビューに合わせた導入支援などの取組を通して、本県の強みである多様な産地づくりを推進してまいります。
次に、交流促進・きずなづくりについてであります。
ホープツーリズムを中心に文化財や非日常的な体験スポットなど、本県ならではの多様な観光資源をいかし、持続可能な観光交流の拡大に向けた「ふくしまSDGsツーリズム」を展開し、福島の復興の加速につなげてまいります。
また、全線運転再開を迎えるJR只見線の利活用を促進するほか、越後三山只見国定公園の誘客や魅力発信の拠点として道の駅会津柳津にビジターセンターを整備いたします。
さらに、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーの継承に向け、都市ボランティアやアスリートなどとのつながりをいかし、スポーツによる交流人口の拡大や情報発信などに取り組んでまいります。
次に、風評・風化対策についてであります。
根強い風評と加速する風化に対して、引き続き、戦略的な情報発信に取り組んでまいります。
特に、昨年、国が示した「ALPS処理水の処分に関する基本方針」による新たな風評への懸念に対して、首都圏において本県の正確な情報や魅力を強力に発信するとともに、各種メディアや市町村との連携による漁業の魅力発信、県産水産物の競争力強化への支援、米国におけるトッププロモーションを始めとした国内外に対する県産品の販路拡大に向けた取組など、多様な手段により、風評・風化対策を強化してまいります。
以上の主要な事業を含め、令和4年度当初予算における総合計画の8つの重点プロジェクトに係る事業は、527事業で、計3,499億円となります。
本県は、いまだ途上にある複合災害からの復興に加え、頻発している自然災害や新型感染症など、多くの困難を抱えておりますが、これまで積み重ねてきた取組により明るい光も着実に増しております。
この流れを一層確かなものとし、総合計画に掲げる将来の姿に向けた目標を一つ一つ実現するため、この当初予算を最大限にいかし全力でチャレンジを続けてまいります。
【質問事項】
【記者】
知事からも言及ありましたが、新年度は新しい総合計画の初年度に当たります。計画9か年次で、政策も多岐にわたると思いますが、新年度、何を重点的に予算編成をしたのか、考え方について伺います。
【知事】
今回の令和4年度の当初予算でありますが、ネーミングと、また今お話がありました、どういった視点を大事にしているか、五つの視点を示しながら御説明したいと思います。
まず、ネーミングはこちらです。「新総合計画スタート予算」。令和4年度、今年の4月から新しい総合計画がスタートします。この新しい総合計画を実行していくために、新年度予算は極めて重要な位置付けとなります。
この「新総合計画スタート予算」においては、総合計画に掲げている将来の姿の実現に向け、大切な新しい一歩を新年度に踏み出すということになります。特に、複合災害からの復興、福島ならではの地方創生、あるいは新型感染症への対応など、こういった重要課題を解決するために、今回の予算編成は、そういった点に特に力を入れて編成しております。
では、五つの視点に沿って、何が重要かということを、順にお話したいと思います。
まず「誇り」であります。我々「ふくしまプライド。」という表現をしておりますが、「ふくしまプライド。」を福島の復興と創生の力にしていきたいと考えています。では具体的にどういう事業を行うか。例えばホープツーリズムを中心にして、福島県の誇る観光資源をいかして、持続可能な観光交流に向けた「福島SDGsツーリズム」を積極的に展開していきたいと考えています。
次、二つ目の視点は「連携と共創」です。つまり、福島県の県民の皆さん、もちろん我々も一生懸命頑張るわけですが、やはり国内外の多くの方々と力を合わせていくことで、より効果的に復興・創生を成し遂げることができると考えています。そこで、例えば、会津地域が一丸となって、今年の秋に全線運転再開を迎える只見線の利活用促進による地域振興策、これを日本全体に、あるいは場合によっては世界の方々にも呼び掛けながら展開していくことが、「連携と共創」としての重要なプロジェクトになると考えています。
次は、三つ目の視点、それは「挑戦」、チャレンジです。我々が今向き合っている課題は、前例のない課題です。ただ、前例のない課題だからこそ、逆に様々な挑戦をして、その課題解決に向けて突破していく、この思いが重要です。例えば、福島イノベーション・コースト構想の推進のために、廃炉関連や医療関連、航空宇宙関連産業、こういったものへの支援を強化して、新しい産業、新産業の創出と集積を促進していきます。
次は、四つ目の視点です。こちらは「ご縁」という言葉です。福島に心を寄せていただいている方、あるいは福島のことを応援して(くださる方)、国内にも世界にもおられます。こういった方々との絆をもっと深めていきたいと考えています。例えば、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーの継承に向けて、都市ボランティア、こういった方々とのつながり、あるいはアスリートの皆さん、オリンピアン、パラリンピアンとのつながりをいかした交流人口の拡大、情報発信に力を入れてまいります。
そして最後、五つ目の視点は「信頼」です。丁寧、的確な発信、取組を積み重ねること、これは、特に原子力災害という極めて重い深刻な課題を抱えている福島だからこそ、この信頼という言葉を大事にしていきたいと考えています。例えば、首都圏で本県の正確な情報を強力に発信する取組、メディアの皆さんとの連携による漁業の魅力発信など、多様な手段で風評対策、併せて風化対策を強化していきたいと考えています。
新年度予算においては、新しい総合計画、「新総合計画スタート予算」として「誇り」、「連携と共創」、「挑戦」、「ご縁」、「信頼」、こういった視点を大切にして、一つ一つの事業を、まず予算化し、そして新年度において着実に実行していくことで、福島の復興と地方創生、そして新型感染症対策を着実に前進させていきたい、このように考えております。
【記者】
新型コロナウイルス感染症対応の予算ですが、今年度当初比で354億円増を確保していますが、既存のメニューの強化という印象もあります。今年度、補正予算で何度も措置しましたが、感染拡大が今も続く中で、特に社会・経済活動の維持・再生に向けて、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
【知事】
新型コロナウイルス感染症対策においては、二つの施策が重要であります。まず一つ目が、感染症を抑え込む、感染拡大を防止するための施策。そしてもう一つが、今御質問いただいた地域の経済、地域社会を維持・再生していくための施策。今回の1,200億円余りの新型感染症対策予算の中には、正にこの両輪が組み込まれている状況にあります。
昨年度や今年度の当初予算で一定の金額を計上しておりますが、それに加えて、今年度も補正予算、あるいは専決などの形で、各タイミングにおいて臨機応変に追加を行っております。
まず、今回の新しい予算の中では、これまで我々が積み重ねてきた知見、例えば病床や宿泊療養施設の確保、あるいは病院へのサポート体制、自宅療養者の皆さんへのケア、こういったものに関わる予算は全て組み込んでおります。
こういったことを実際に実践しながら、感染の急拡大を抑え込む、特に第6波の波を脱していくことが重要でありますし、併せて、今回、福島県全体で非常事態宣言を発出し、特に飲食、観光の方も含め、非常に大きなダメージを負っておられるという状況にありますので、この第6波の感染の波が収まった後、またタイミングを見ながら、こういった飲食、観光、あるいは今回の予算の中には、それぞれの事業者さんに対する多くの支援メニューが含まれておりますので、そういったものを適時発動していくことで、傷ついた県内の経済、あるいは社会の維持・再生を是非、進めていきたいと考えています。
【記者】
復興・創生分の予算が過去最少となったかと思います。知事の最初のお話にあったとおり、変わらず復興には重点を置いた予算編成かと思いますが、復興に関する予算編成に対する思いを伺います。
【知事】
まず今回、復興・創生分が前年度と比べて一定程度減額をしているというのは、福島の復興がこの11年間で着実に進んでいることの現れであります。
基本的にこの11年間で、例えばハードの復旧であったり、避難者の皆さんに対するいわゆる扶助費的な支出であったり、除染経費、あるいは中間貯蔵施設に移送する、こういったものに関わる予算は、これまで必要な額をしっかり確保して、1年1年着実に進めてきました。
したがって、帰還困難区域は除いてでありますが、いわゆるハード系の予算であったり、避難者に対する必要な支援というものを、これまで講じて、一定の役割をきちんと果たしてきたからこそ、この減額という形になっております。
したがって、予算の表面を見ますと、少なくなったという捉え方もあろうかと思いますが、これは、正に我々が一つ一つの施策をしっかり前に進めているからこそだと考えています。
一方で、例えば除染経費等が大きく下がっておりますが、ふくしま復興再生道路等は、むしろ増額になっております。
したがって、その時点、時点で復興に必要な予算というものは、今、第2期復興・創生期間の1年目になっておりますが、まず5年間全体の予算フレームとして、2年前、3年前の段階で政府と交渉して、全体としての枠を確保し、そして各年度、各年度、例えば今ですと令和3年度、間もなく令和4年度ですが、その政府の予算編成において、福島県としてこういう事業が復興に必要であるということを強く訴えて、それを明確に予算化してもらっています。
したがって、特に今、第2期復興・創生期間で間もなく2年目に入る訳でありますが、ここにおいても、特に帰還困難区域、あるいは風評対策を始めとして、福島県は復興のためにこういう事業、プロジェクトが必要であると、そのために的確な財源措置を政府が責任を持って講じるよう、知事として、県としてしっかりと要請し、また形にしてまいります。
【記者】
具体的な施策についてお伺いします。その中の一つで風評・風化対策において、米国におけるトッププロモーションというものが今回、組み込まれていました。米国は去年の9月に輸入規制が解除されまして、それをきっかけにして、今回、米国でのプロモーションということですが、福島県の輸出額は、既にアメリカが多くを占めておりまして、まず、このアメリカでトッププロモーションを行うということの意義を、知事はどのように考えているかについて伺います。
ただ、その一方で、県産品を輸出していく中で、他の県も、もちろんアメリカなどに輸出している訳ですが、そことの競争にどう勝っていくのか、どう競争力を高めていくのかについて、知事の考えを併せて伺います。
【知事】
今、頂いた御指摘、非常に大事な視点だと思います。
まず、今回、アメリカにおけるトッププロモーションの予算を組み込んでおります。私は知事に就任してから7年を迎えております。このコロナの2年間を除く5年間において、10数か国に実際に参りまして、例えばヨーロッパ、アメリカ、中国、あるいはアジアの国々、色々なところに行きまして、直接現地の政府関係者であったり、県産品を実際に物流し販売してくれる方々、あるいは一般の国民の方々に直接お話をし、時には説明や発表等を行いながら、福島県産品の安全性はもとより、その品質、魅力、おいしさ、こういったものを伝えてまいりました。こういったリアルでの情報発信は、極めて重要です。
実はこの2年間は、こういったことが感染症の影響でままならず、海外の方々に発信するということは、ある程度オンラインでできる限りはやっていますが、すごく歯がゆい思いであります。
したがって、この予算におけるトッププロモーションも当然ながら、世界各国との行き来が、ある程度、着実にできるようになった段階で行うという前提付きではありますが、私自身が直接行って、特に昨年、輸入規制が全面解除されたばかりのアメリカですので、政府の関係者、マーケットの関係者、あるいはマスコミの皆さんの顔を見ながら、直接プロモーションすることは、大きな意義があると考えております。
また、先ほどお話があったとおり、アメリカは非常に大きな市場、マーケットであり、福島県にとって、一部はもう始めておりますが、非常に「御理解を頂き始めたな」というのが実感であります。
まだ直接伺うことはできていませんが、リモートでの対応、あるいは現地におられる方のお力を少し借りることによって、早くも本格的なアメリカへの輸出が、お米を始め、スタートしています。これは大切なチャンスだと考えておりまして、そこに、より大きな加速を加えるためにも、知事自身が伺うこと、これは大きな意義があると思っています。
ただ一方で、先ほど御指摘があったとおり、ライバルはたくさんいます。日本国内のそれぞれの県が、自分のところの農産物はおいしい、これを一生懸命PRされるのは当然のことですので、いい意味で切磋琢磨しながら、私自身、福島県知事として、福島の農産物の品質は日本でもトップレベルだと思っておりますので、それを堂々と訴えていくことが重要だと思っています。
またもう一つ重要なことは、ストーリー、「ふくしまプライド。」というストーリーです。
2011年、東日本大震災と原発事故によって、ローマ字の「FUKUSHIMA」という地名は非常に暗いレッテルを張られていると思います。このネガティブなイメージをひっくり返していくためにも、単に農産物の安全性やおいしさをPRするのではなく、この11年間の我々が積み上げてきた復興に向けての努力、苦労、そして、そういったストーリー、成果も含めて御説明をする。ただ一方で、11年経っても、まだこういう難しい課題を抱えていて、悩んでいて、苦しんでいるということも、もちろん申し上げますが、こういったストーリーをお伝えする中で、御理解を頂いて、日本の産物の中でも、より福島のものを笑顔で食べていただけるように、知事として努力を重ねていきたいと考えています。
【記者】
この5つの視点は、「誇り」だったり「信頼」だったり、全てが正に連携していると感じますが、その重点プロジェクトの中でも、ALPS処理水の処分に関しては、新規予算も編成されています。(ALPS処理水については)外的な要因として、県の取組に大きく影響してくるのかと思いますが、放出開始計画がおよそ1年という中で、県として、この1年、どういった取組をしていくのか、またその重要性についてどのように考えているか伺います。
【知事】
今いただいた御指摘、これもまた非常に重要だと考えています。
まず、ALPS処理水の問題については、昨年、政府自身が基本的な方針を決定し、その後、行動計画、アクションプランを策定したところであります。この問題に対して、漁業者の皆さん、あるいは多くの県民の皆さんが、11年間、これまで我々が積み重ねてきた風評払拭の努力が水の泡になってしまうのではないか、また新たな風評が追加されるのではないかという強い不安を抱いておられます。こういったものをしっかりと取り除くことができるように、政府自身が正確な情報発信と具体的な風評対策を一つ一つ行って、結果を出していくことが問われている。それが今だと思います。
したがって、あくまでも本質は、当事者である国と東京電力が責任を持って努力をすること、これがまず基本です。
ただそれに合わせて、県自身も、これまでの11年間、風評払拭のために、本当に努力を重ねてきました。そういったものを、現在、風評・風化対策の戦略をつくっておりますが、その中でも、それぞれの分野ごとに、11年目の今、何をやるべきかということを改定しています。
そして先ほど申し上げましたが、例えば、新年度予算の中で、首都圏で「福島ウィーク」ということで、福島について集中的に情報発信する期間を設けて、多くの方々、国内あるいは世界の方々に、福島の「今はこうなっているのだな」ということを、正確に知っていただく機会をつくる、これが今回の予算の一つのポイントになります。
あわせて、(こういったイベントを)1週間だけやればいいというものではもちろんありませんので、通年、1年間を通して、観光の分野、農林水産業の分野、あるいは復興の姿を発信する様々なジャンルにおいて、継続的に県の取組として、市町村や関係機関と連携して進めていくこと、これに力を入れていきたいと思います。
【記者】
二点目は、(知事の)2期目の最後の総仕上げの年になると思うのですが、ここで成し遂げたいことを含めて、どういう思いを予算に込めたのか、改めて伺います。
【知事】
また、令和4年度の当初予算ですが、新しい総合計画のスタート年度の予算であります。「新総合計画スタート予算」、今、福島県が直面をしている東日本大震災、原子力災害からの復興、そして、福島ならではの地方創生、さらに、目の前の大きな大きな課題である新型感染症の速やかな収束と地域経済の維持・再生、これに全力を注ぐために必要な予算を今回編成したものであります。
今後、県議会における丁寧な御説明、御審議を経て、御議決をいただいた上で、新年度は、この一つ一つの施策の推進に力を入れていきたいと思います。
【記者】
今伺った中の、5つの視点の中で「誇り」、あとは「信頼」、この辺と関係する話ですが、県が風評対策の強化に骨を折る中で、元首相5人がEUに送付した書簡の表現に関して、昨日、知事の名前で申入れを行ったという話について、投げ込み(記者発表)がありました。
元首相の影響力は非常に大きいのではないかという懸念があるところですが、(既に)文書ではいただいていますが、この事実を知った時、聞いた時の知事の思い、それから、この申入れというのは、やはり余程のことだと思いますが、そこに至った思いについて伺います。
【知事】
5人の元首相経験者が、欧州委員会委員長に宛てた書簡の中で、東京電力福島第1原子力発電所の事故において、「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」という表現が含まれていたことから、元首相経験者である方々の発言の影響力を踏まえ、県として書簡を送付したところであります。
甲状腺に関する放射線の健康影響については、県民健康調査検討委員会において、平成28年3月に、いわゆる先行検査に関してですが、「総合的に判断して放射線の影響とは考えにくい」と評価をされました。
そして、令和元年7月には、現時点において甲状腺検査の本格検査、この時は検査の2回目でありましたが、ここで「発見された甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とする見解が示されております。
また、検査3回目までの解析・評価について、現在も甲状腺検査評価部会において議論を継続しております。
福島県の復興にとって、こういう見解を含め、正確な情報を繰り返し発信していくことが極めて重要であることから、科学的知見に基づく客観的な情報を発信していただくよう、書簡により申し入れたものであります。
県としては、引き続き、県民の健康を長期的に見守っていくため、放射線や健康に関する質問、相談について丁寧に対応するとともに、検査を希望する方が円滑に検査を受けられるよう、しっかりと対応してまいります。
また、初めて私自身がこの書簡を読んだ時の思いでありますが、特に、元首相を経験された5名の方々の欧州委員会の委員長に宛てた書簡の中に、こうした表現が含まれていたことは遺憾であります。
原子力災害に伴う課題というものは、この件に限らず、本当に複雑多様で、様々な葛藤があります。それを短いワードで切り取ってしまうと、あたかもそれが事実である、あるいは確定したものであるかのように受け取られかねないという側面を含んでおります。今日もこの新年度予算の中で、風評の話を重ねてお話をさせていただいています。11年間、風評払拭の努力を続けてきた我々だからこそ、正確な事実に基づいた情報を共有すること、そしてその認識に基づいた上で、様々な意見・協議があることが何よりも重要だということを、今回の件に限らず、原子力災害に関わる重要な考え方としてお話をさせていただきたいと思います。
【記者】
二点あります。一つ目が、今の産経の記者さんからの質問に関連して、今ほど、知事も複雑多様で、すごく難しい問題だということをおっしゃられておりましたが、先日、東京地裁に、子どもの甲状腺がんに関する訴えを起こされた方がいたと思います。これについて、昨日の書簡の関係も含めて、知事の受け止めを伺います。
【知事】
まず、前半の方への答えです。
先般、そうした訴訟が提起されたという報道等は拝見をしております。裁判に関する事柄については、具体的なコメントは控えさせていただいております。
ただ、私自身先ほど申し上げましたように、例えば、子どもたちの甲状腺がんに関する見方、あるいは福島県の原子力災害に関わる様々な問題は、本当に多様で複雑、特に一言では語れないというところがポイントだと思います。正確に伝えようとすると、非常に長い文章になります。ここのところが重要です。ですので、昨日、我々が、申入れをした書簡の中においても、そのプロセスを丁寧に書いてありますし、また、それぞれに一つ一つエビデンスやファクトが連なっておりますので、やはり大事なこととしては、ワーディングで切り取ってしまうと誤解を生んでしまうということを、先ほど申し上げさせていただきました。
【記者】
新型コロナウイルス感染症についてお伺いします。
濃厚接触者となった同居家族について、検査をせずに医師の判断で陽性とする「みなし陽性」が、全国各地で今取り入れられています。この「みなし陽性」について福島県では、まだ導入されていないものと認識しておりますが、今後の導入の見通しについて伺います。
【知事】
先般、国からの通知によって、診療・検査医療機関の受診に一定の時間を要するような状況となっている場合には、自治体の判断で発熱等の症状がある場合でも、重症化リスクが低いと考えられる方については、御本人が提示される検査結果を用いて確定診断を行って差し支えないこととされました。また、同居する御家族など、感染者の濃厚接触者が有症状、症状有りとなった場合には、医師の判断によって、検査を行わなくても臨床症状での診断を可能としております。
福島県においても、昨日の(新規陽性者数は)605名、また本日も580名余りということで、感染者が急増している状況にあります。検査のための受診で医療機関等に負担がかかることを軽減するため、保健所が健康観察を行っておられる同居家族等の濃厚接触者については、症状が出現した場合、状況に応じて医師の判断により臨床症状から診断することを実施することといたします。
なお、臨床症状によって診断された方についても、従来の感染者と同様に、健康観察などは丁寧に支援してまいります。また、この内容については、この後の(県新型コロナウイルス感染症対策本部事務局の)ぶら下がりで詳しく御説明をさせていただきます。
【記者】
今回の予算編成の話でしたが、県庁内の組織体制の見直しなどの考え方もあれば伺います。
【知事】
まず、令和4年度に向けて大きな組織改正は予定しておりません。引き続き、復興・創生の進捗状況、あるいは変化する行政需要等を踏まえて、不断の業務執行方法の見直し、あるいは組織体制の検討を行いながら、より効果的で、効率的な行政運営を進めてまいります。
いわゆる年度ごとの組織改正の予定はありませんが、今まず目の前にありますのが、新型感染症対策であります。これは正に今、第6波のど真ん中にありますので、新型コロナウイルス感染症の対策本部の人員が不足をしています。また、保健所、現場も不足をしています。
したがって、県の知事部局、あるいは地方振興局、建設事務所などの出先機関、こういったところの総力を挙げて、感染症対策に人員をシフトさせ、この厳しい第6波の状況を乗り越えることが最優先だと思っておりますので、組織改正とはちょっと異なるのですが、今は、そこに力を傾注しております。
(終了)
【問合せ先】
○発表事項
1 令和4年度当初予算について
→総務部財政課 電話024-521-7027
○質問事項
1 令和4年度当初予算について
→総務部財政課 電話024-521-7027
2 元首相らのEU欧州委員会への書簡について
→保健福祉部県民健康調査課 電話024-521-8219
3 甲状腺がん患者による集団訴訟について
→保健福祉部県民健康調査課 電話024-521-8219
4 新型コロナウイルス感染症について
→新型コロナウイルス感染症対策本部(保健福祉部地域医療課) 電話024-521-7238
5 令和4年度組織改正について
→総務部行政経営課 電話024-521-7093